朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」十月
新宿の朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」。今月の兼題はサイトより、季語「稲妻」花「柘榴」浪速の味「船場汁」です。
【特選】
東京は凸凹の街いなびかり 涼子
ビルの谷間を走る稲光には、自然のなかでのものと違う迫力がある。東京をデコボコの街と捉えた。
この村は花御所といふ柿の里 弘道
柿の名所は日本中にあるが、「花御所」とはまた雅。句によっては「といふ」がもたつく場合があるが、おっとりとした言い回しがこの句には合っている。「晴れ渡り花御所といふ柿の里」。
【入選】
虎ノ門祭のタイコビル間から (松)和子
都会の祭りの印象を素直に描いた。「ビルの間から祭太鼓や虎ノ門」。
泣き声もあくびも祓はれ七五三 涼子
様子が目に見えるよう。小さい子供にとっては試練の一日。
雪あればいよいよ旨し関東煮 隆子
大阪の雪。「あれば」が少々うるさい、普通に。「雪降ればいよいよ旨し関東煮」。
秋寒の心解けし船場汁 (藤)和子
「秋寒」が上手く据わった。船場汁が美味しそうなのがなにより。
取り皿の不揃ひもよきおでんかな 隆子
こちらもよき仲間との美味いおでん。
人類に闇と光と柘榴かな 勇美
思い切った一句だが、もう少し「柘榴」の実態に迫らないと納得の一句にはならない。
酒酌めど淋しき月ぞお前の通夜 守彦
下五の字余りに思いが溢れる。
落日を一匙すくひ熟柿かな 勇美
こぼれ落ちんと晩秋の落日と柿。「落日を一匙すくふ塾柿かな」
落ち鮎や炭火にはぜて太き腹 (藤)和子
たっぷりと卵の入った「太き腹」。命をいただく冷徹さが俳句。原句は「落ち鮎や炭火にはぜし太き腹」。
悲しみは西田幾多郎秋の夜 (松)和子
生きとし生けるものの悲しみ。季語「秋の夜」がいい。
船場汁女系の裔や竈猫 光枝